アルゼンチンに行ってきた。
南米というのは行くだけで大変だ。そしてアルゼンチンというのは日本の真裏。
もちろん直行便はなく、今回はヒューストン経由で、
成田→ヒューストン国際空港で約13時間、
トランジット待ちで空港で約6時間、
ヒューストンからブエノスアイレスまで約10時間と、片道30時間の移動時間となった。行って帰るだけで、合計2日以上消えてしまうという恐ろしい旅だ。
まずこの移動をこなせる自信が無い、という人は多いかもしれない。
今回の復路ではアルゼンチンから21:20発の飛行機に乗った。移動に30時間かかるので、旅立ちの日の朝にお風呂に入ってから(空港のラウンジなどでシャワーを浴びない限り)、日本の自宅に帰るまで約2日お風呂に入れない、という事実に耐えられない女性もいるかもしれない。
日本に帰国する際のPCRテストは無くなったが、それでもワクチン証明書を出したりなど色々ペーパーワーク(実際はアプリ、WEB経由でほとんどできるが)も増えているので、ただでさえ煩わしい海外旅行が、さらに面倒になったのでそれで尻込みする方もいるかもしれない。
ただ、それを超えても、地球の真裏まで行って帰るという、そんなことが出来る人間になりたかったので行ってみた。
結果出来た。
それだけで良かったと思う。
時間と金をめちゃくちゃ消費したことが果たしてコスパで考えると正解だったかは分からないが……人生の正解は死ぬまで分からないものだろう。
アルゼンチンがどういう国だったか、というのはあまり自分の中では意味を持っていない。
それでも異文化の中で面白いな、と思うことも多かった。
私の全くの主観でアルゼンチンがどういう国と感じたかというと、(8割ブエノスアイレスで過ごしたが)
・犬が多い。
・時間がゆっくり。
・公共交通機関が安い。カフェとかの値段は日本と変わらない。つまり貧富の差が激しい。
という国だと思った。
ブエノスアイレスを歩いているととにかく犬を散歩させている人が多い。どれだけ飼ってるんだ!と思ってネットで軽く検索したら、
一番多く犬を飼っている国は、アルゼンチンで66%
と、世界で一位らしい。
街中で、犬を10匹ぐらいを一度に散歩させている、散歩させ屋さんもよく見かけた。10匹もいたら犬たちが本気で道路に走っていったら止められないだろうと思うが……。すごい街もあるものだ。
犬好きの人は、自分の犬を連れていったりできれば楽しいのかも?しれない。大変さを上回るかどうかは何とも言えないが。実際空港出国ゲート後でも犬を連れている人は見かけた。
いわゆる飼い主のマナーも日本とは違う、というかあまり気にしない、おおらかなな感じだった。
まずリーシュを付けている人が少ない。街中、道路で車が走っている状況でもしない。それは少し恐ろしいと感じる日本人の私である。もちろん公園などではするわけがない。お店でも自由。
かわいい。そしてブエノスアイレスで見る柴犬はなぜか日本で見るより可愛い。
糞は拾っている人が多い印象だが、おしっこを水で流す、みたいな日本でよく見る習慣を見た回数は0。まあみんな犬飼ってるんだから、おしっこぐらいなんだ!問題があるなら市が、国が解決すればいい!というような気概があるのだろう。というわけで糞を入れるためのビニール袋が入ったポストみたいなものが道に立っていたりもする。犬を飼っていることのほうがマジョリティなのだから、優遇されるべき、というのは民主主義あるあるである。
行ったら犬が飼いたくなる国、それがアルゼンチンなのだ。
そして流れる時間がゆっくりだ、とも感じた。まあこれは日本のほうが世界標準からズレているだけだと思うのだが、気になったのはレストランやカフェなどでとにかく店員がテーブルに来ない。日本のように「すいませーん」とアテンションを引くのも憚れる文化らしい。つまり来るのを待つしか無い。アイコンタクトと身振りのベストエフォート。
そして注文してからも、まあ料理が来ない来ない。お店に着いてから、
・店員が来る
・注文する
・メインの料理が来る
までは1時間は見ておいたほうがいいかもしれない。12時にお昼が食べたかったら、少なくとも11:30にはお店に着いていないといけない。
でもまあ、ご飯の時間というのは本来ゆっくりと楽しむべきなのだという側面から見ると、何も問題ないのかもしれない。日本が早すぎるのだ。日本だとご飯を食べに行って10分も料理が出てこなかったら「あれ?オーダー通ってるのかな?」と不安になるが、30分待つのが当たり前かと思うと、そんな心配をするのが馬鹿らしい。ご飯に来たのだから数時間はゆっくりする、という気持ちでレストランに向かわなければいけない。
そしてとにかく量が多い。これもまあ日本が少ないだけなのだが、もうとにかく多い。日本の外食でも一人前食べることが難しい私は、絶望しかない量がくる。外国人はフレンチフライ食べすぎ!と健康に警鐘を鳴らしたい。WHOはまずそこに手を付けるべきである。
アルゼンチンの食事と言えば、
・牛肉
・フレンチフライ
・コーラ
が主食である。(全くの主観)
とにかくみんなコーラを飲んでいる。ブエノスアイレスでは他の国と比べてあまりグローバルブランドを見かけなかった。やはり南米は、特に通貨が不安定な国は、グローバル企業が進出しにくいのだと思うが、それでもコカ・コーラの浸透ぶりはすごかった。私もWhen in Rome, do as the Romans doとコーラを注文していたが、1年分のコーラを飲んだ。1年分のコーラと3ヶ月分の牛肉を2週間で摂取してきた。
牛肉は確かに安くて美味しいのかもしれない。しかし安いと言っても、多めに見積もって日本の半額ぐらい、結局鶏肉のほうが安い、という市場感ではないだろうか。
味も美味しいのだが、牛肉を美味しくいただくのは結局調理による、という気もして、とにかく牛肉食べてればいいんだよ!とはならなかった。
ミラネサ(ミラノ風カツレツ)、パナーダ(でかい餃子のようなパイのような)、アルファフォレス(鬼のように甘いお菓子)と色々アルゼンチンらしい料理を食べてきた。どれも美味しかったが、それよりもタコスのほうが美味かったな、と言うとアルゼンチンの人に怒られるかもしれない。日本でも結局ラーメンやカレーが美味しいのと通じるものがある。
食べ物に関して量以外に特に違和感はなく、日本人でも十分生活していけると感じた。
ただ、帰りのANAの機内食で出汁のスープが出たときはめちゃくちゃ美味い!と思ってしまった。やはり舌が日本の味にチューニングされているのだな。
貧富の差は、やはり公共交通機関の価格が安い、ということで肌に感じた。
カフェでコーヒーを頼んだたら、400〜500ペソぐらいする。しかしバスの運賃は25ペソ。この差はすごい。電車もバスと同じぐらい安い。
ブエノスアイレスを行き交う人々を見ると、やはりイタリア系移民の方々が多いが、普通のカフェで働いているのはアルゼンチン諸外国から来ている方々が多いように思う。
普通の企業で働いていればカフェで一服もできるが、カフェで働いている人はそんなことはなかなか出来ない、という給与体系を感じる。
アルゼンチンの初任給をネットでぱっと調べると月6〜8万円と出てくる。普通の?企業努めならもうちょっとありそうに思える。10〜12万円というところだろうか。移民の方々はその半分ぐらいなのか。
世界共通で良いお店かどうかは店員の格好を見れば分かる。ピシッとした格好をしていれば良いレストラン、そうでなければ庶民のレストランだ。
そこそこ良いレストランに食べにいったら、やはり一人5000ペソぐらいはする。月6万円の給料ではこれはめったに食べにいけるものではない。
と、普通に円とアルゼンチンペソを同値で比較しているが、そもそも円とアルゼンチンペソのレートを正式に把握するのは難しい。
Google調べでは、1円=0.98と出る。
ほぼ、1円=1アルゼンチンペソとして計算していいだろう。
しかし難しいのが、アルゼンチンではアメリカドルがめちゃくちゃ強いのである。
今が1ドル=140円としても、アルゼンチンでは1ドル=280アルゼンチンペソぐらいで交換できてしまう。これだと円とアルゼンチンペソは倍ぐらい価値が違うことになってしまう。
これは何故かという、アルゼンチンでは自国通貨の変動があまりに激しく、ほっておくとどんどんインフレしていってしまうので、自国民はアルゼンチンペソのまま持っておきたくない。なのでどんどん外貨に替えていってしまうらしい。
そんなことをしているとますます自国通貨が弱くなっていくので、今ではアルゼンチン国民は月に200ドルしか米ドルを入手できないという制限がついてしまった。クレジットカードなどでNetflixなどの米国サービスに支払いをする時も特殊税(60%ぐらい?)がつくという。
そうはいってもアルゼンチン国民も自分のお金をペソで持っておきたくないので、いわゆるブラックマーケットでドルを手に入れようとする。そこでは正しいレートよりもかなり割高でドルを買うことになる……。
というわけで、カフェで500ペソのコーヒーが、日本円レートで考えると500円だが、ドルベースだと、250円ぐらいになる。これだとかなり物価は安く感じる。
アウトレットでナイキのパーカーの値段を見たら、25,000ペソぐらいであった。でもこれもドルベースで考えたら12,500円ぐらい。アウトレットで吊るしで売っている、というとおかしいが、何着もどかっと売られているナイキのパーカーなら、まあそれぐらい値段だろう。iPhoneやMacなども見てみたが、ドルベースだと日本と変わらない(少し高い)ような価格であった。
つまり自国生産できるものは、ドルベースで見ると安い、輸入物はドルベースで見ると妥当。
日本も遠くない将来こうなっていくのだろうな、とは思わされた。
結論、アルゼンチンに行くときはお金をドルに替えていきましょう。