おねずみ三千世界

これより西方、十万億もの仏国土を過ぎて、世界があるが、それを名づけて極楽という。

【読んだよ】多様性の科学

読んだ。

途中でこんなのも書いた。

gratt.hatenadiary.org

結論面白かった!おすすめです。

 

America is a more individualistic society; Japanese culture is more interdependent. Americans tend to focus on objects; Japanese on context.

アメリカはより個人主義的な社会であり、日本文化はより相互依存的である。アメリカ人は物に焦点を合わせがちであり、一方、日本人は文脈に注目する傾向がある。

同じ映像を見せても、日本人は背景に着目するなど、見ている箇所が違う、という実験。

日本はコンテキスト強めの社会とは言われていますが、こういった実験で有意な差がでる(でた?)のは面白いですね。

 

The code name for the plot among Al Qaeda’s inner circle was the Big Wedding. In the ideology of suicide bombers, the day of a martyr’s death is also his wedding day where he will be greeted by virgins at the gates of heaven.

アルカイダの内部の中枢における陰謀のコードネームは「ビッグウェディング」でした。自爆攻撃者のイデオロギーでは、殉教者の死の日は彼の結婚式の日でもあり、彼は天国の門で処女たちに祝福されることになります。

チラホラ見る非モテ自爆テロさせた説ですが、やはり本当だったのですかね?悲しいことです。来世があると思って相手を操るというのは唾棄すべきことで、ほぼすべての宗教がそうでしょう。救いという名の欺瞞。来世より前世より今世。

 

Think how comforting it is to be surrounded by people who think in the same way, who mirror our perspectives, who confirm our prejudices. It makes us feel smarter. It validates our world view. Indeed, evidence from brain scanners indicates that when others reflect our own thoughts back to us, it stimulates the pleasure centres of our brains. Homophily is somewhat like a hidden gravitational force, dragging human groups towards one corner of the problem space.

同じように考え、私たちの視点を反映し、偏見を確認する人々に囲まれることがどれだけ慰めになるか考えてみてください。それは私たちが賢く感じることを可能にします。私たちの世界観を正当化することもできます。実際、脳スキャナーからの証拠は、他人が私たち自身の考えを反映すると、脳の快楽中枢を刺激することを示しています。ホモフィリーは、人間のグループを問題空間の1つの角に引き寄せる、隠れた引力のようなものです。

似た人ばかりを集めるのはそれが快感だから。でもその快感を優先させていくと成長もない、という一般にも通用する話ですね。コンフォートゾーンを出なくてはいけない。

 

Take a look at the following list of names: Estée Lauder, Henry Ford, Elon Musk, Walt Disney and Sergey Brin. Can you see what they have in common? On the surface, they look like a list of famous entrepreneurs, people who have made an impact on American society. But dig a little deeper and you will note that they share a pattern with dozens of others, including Jerry Yang, Arianna Huffington and Peter Thiel, each of whom have helped to shape the modern economy of the United States. The link between these people? They are all immigrants, or the children of immigrants.

以下のリストを見てください:エスティ・ローダー、ヘンリー・フォードイーロン・マスクウォルト・ディズニーセルゲイ・ブリン。何か共通点が見えますか?表面的に見ると、有名な起業家のリストのように見えます。アメリカ社会に影響を与えた人々です。しかし、もう少し深く掘り下げると、ジェリー・ヤンアリアナ・ハフィントン、ピーター・ティールを含む多くの人々と、彼らと同じパターンを共有していることに気付くでしょう。彼らはすべて移民であるか、移民の子孫です。

ふむ。

A study led by the economist Peter Vandor examined the capacity of students to come up with business ideas before and after a semester. Half the students went to live and study abroad during the semester, while the other half stayed in their home universities. Their ideas were then assessed by a venture capitalist. Those who studied abroad had ideas that were rated 17 per cent higher than those who had not. Indeed, those who stayed in their home universities actually experienced a decline in the quality of their ideas over the course of the study.

経済学者のピーター・ヴァンドールが主導したある研究では、学生たちが1学期前と後にビジネスアイデアを思いつく能力を調べました。半数の学生は1学期中に海外で生活し、学びましたが、もう半分の学生は自分たちの大学に留まりました。その後、彼らのアイデアベンチャーキャピタリストによって評価されました。海外留学した学生たちは、そうでない学生たちに比べて、アイデアの評価が17%高かったとされています。実際、自分たちの大学に留まった学生たちは、研究の過程でアイデアの品質が低下したという結果となりました。

今までの人生とは異なる文化に触れるとアイデアの品質も高くなる、と。アイデアとは、何かx何かの組み合わせであることが多いので、今までにない組み合わせを考える新たなる素地ができるのでしょう。

Before the task, half the students were asked ‘to imagine living in a foreign country and, in particular, about the types of things that happen, how they feel and behave, and what they think during a particular day living abroad. They were then asked to think and write about this experience for several minutes.’ A control group was given a different task: they were asked to think about a day not living abroad but in their hometown.

タスクの前に、半数の学生には「外国に住んでいる想像をするように」との指示が与えられました。特に、外国で起こること、感じ方や行動、ある日の外国での暮らしについて考え、数分間にわたってこの経験について考えて書き留めるように指示されました。一方、コントロールグループには異なるタスクが与えられました。彼らには、自分たちの故郷で過ごす1日について考えるように指示されました。

実際にはただ外国に住んでいる想像をするだけでも変わることがある、と。ただ生活を送っているだけでは当たり前のように周りの環境にフィットして、発想がそこから飛躍しにくい、のでしょうか。それが補正されて、思考の幅が広がるのでしょうね。

What happened? Those who imagined living abroad were 75 per cent more creative, solving more puzzles, and seeing connections that those who had focused on their hometown just couldn’t see.

結果はどうだったのでしょうか?外国での生活を想像した学生たちは、75%も創造力が高くなり、より多くのパズルを解決し、自分たちの故郷に焦点を当てた学生たちには見えなかったつながりを見出しました。

75%も高く!というとすごい効果ですが、まあこういう指標は何がベースか分からないとアレですね。でも自分が全く別の環境、例えば外国に住んでいたら?などと考えるのは思考の技術の1つとして知っておくと良い技法だと思います。

 

Each year, Henrich shows new students unlabelled toolkits from four different populations: eighteenth-century Tasmanians, seventeenth-century Australian Aborigines, Neanderthals and humans from 30,000 years ago. When the students are asked to assess the cognitive abilities of the toolmakers, they always give the same reply. They rate the Tasmanians and Neanderthals as lower in cognitive ability than the Aborigines and humans from 30,000 years ago because the tools are less sophisticated.

毎年、ハインリッヒは異なる4つの人口から、18世紀のタスマニア人、17世紀のオーストラリア原住民、ネアンデルタール人、3万年前の人類のラベルのないツールキットを新しい学生に見せます。学生たちにツールメーカーの認知能力を評価するように求めると、彼らは常に同じ回答をします。タスマニア人やネアンデルタール人は、アボリジニや3万年前の人類に比べ、道具が洗練されていないため、認知能力が低いと評価されているのです。

外界から隔絶されているとアイデアが伝搬しない、という話。近世でも3万年前の人類に劣った技術しか獲得できていない。

 

But this is wrong. Why? Because it is impossible to determine innate individual cognitive abilities from the complexity of toolkits. The reason is that innovation is not just about individuals; it is also about connections. Think back to the Tasmanians before and after the flooding. The populations were genetically identical but the relative sophistication of their toolkits could not have been more different

しかし、これは誤りです。なぜなら、ツールキットの複雑さから先天的な個人の認知能力を決定することは不可能だからです。その理由は、イノベーションは個人に関することだけではなく、つながりについても重要だからです。洪水の前後のタスマニア人を思い出してみてください。人口は遺伝的に同じでしたが、彼らのツールキットの相対的な洗練度はより異なっていました。

どれだけ優れた個人が考えたアイデアであっても、伝搬しないアイデアは育つことがない。

そして、出した結果だけを見て、その人が優れているかどうかは判断できない、ということですね。

In the smaller universities, there are fewer available choices, and people have to make connections with people who are comparatively more different. When the campus size is big, on the other hand, there is a greater opportunity for students to ‘fine-tune’ their social network. They can pursue people who are very similar to themselves.

小規模な大学では、選択肢が少なく、比較的異なる人々とのつながりを作らなければなりません。一方、キャンパスが大きい場合、学生たちは自分と非常に似ている人々を追求することができるため、自分のソーシャルネットワークを「微調整」する機会があります。

ベンチャー企業でも最初はみんな仲が良かったりします。選択肢が少ないですからね。それが大企業になると組織だけでなく、人間関係も縦割りになっていくのは上記のような理由も1つあるのかもしれません。

田舎は住みづらく、都会のほうが住みやすい、と考える人がいますが、都会のほうが人の絶対数が多く、気が合う人、趣味の合う人を探しやすい、という理由かも?

 

How many pilots were within the average range across the ten dimensions? Zero. Not a single airman. From a cohort of more than 4,000, none were average. 

10の事柄にわたってどれだけのパイロットが平均範囲内にいたのでしょうか?ゼロです。一人のエアマンも平均ではありませんでした。4,000人以上の集団から、平均の人物は誰もいなかった。

コックピットのサイズは平均を元に作られていたが、その平均にすべて当てはまる人は誰もいなかった、という話。誰のためのサイズだったのか。

アジャスタブルであるというのが大事なのかもしれません。

 

Some people showed benefits from eating the whole-grain sourdough and adverse effects from the commercial white, while others had the opposite response. Some showed little difference between the two, while others showed dramatic differences. ‘The whole data set was highly personal,’ Segal says. ‘You had to look at the individuals, not just the averages.

全粒麦のサワードウと商業用の白いパンを食べた場合、それが良い反応を示す人もいれば、逆に悪い人もいます。一方、少数の人は両方の間にほとんど違いがなく、他の人は劇的な違いを示しました。「全体のデータセットは非常に個人的でした」とセガルは言います。「平均だけでなく、個人を見る必要がありました。」

低糖質ダイエットの本丸、GI値についても新たな視点の研究が載っていました。

パスタとか全粒粉パンとかは低GI食品だ!だから血糖値上がらないので太らないよ、とよく言われていますが、結局は個人差がある、と。白パンでも全然平気な人がいる、どころか、全粒粉のパンのほうが血糖値が上がってしまう人もいる、という点は素直に驚き。

自分の血糖値を測定する機器やそれを使った記事を最近見ましたが、私もそれで試してみたい、と思いました。

 

It wasn’t the software itself that was driving these differences in performance, it was what the choices revealed about differences in psychology. Some people have a tendency to accept the world as it is. They stick with the status quo. Others see the world as changeable. They wonder if there are better ways of doing things and, if so, act upon them.

パフォーマンスの違いを引き起こしているのは、ソフトウェアそのものではなく、選択肢が心理的な違いを明らかにしたことです。世界をそのまま受け入れる傾向がある人もいます。彼らは現状を維持します。一方、他の人は世界を変えられるものと見ています。より良い方法があるかどうかを考え、あれば実行します。

世界を変えられるものだと見る、ただ過ごすのでなく、ルールそのものが変えられるんじゃないか?ハック可能じゃないか?と観察してチャンスを掴みたいですね。

ちなみにここでいうソフトウェアというのはインターネットブラウザのことです。デフォルトのIE(古い)やSafariを使っている人より、ChromeFirefoxを使っている人のほうがパフォーマンスいいのはなぜ?という話でした。

話は変わりますが、status quo、よく出てきますね。よくあるラテン語成句で現状維持、などと訳されます。

 

Techniques such as cooking actually increase the energy available from foods and make them easier to digest and detoxify. This effect allowed natural selection to save substantial amounts of energy by reducing our gut tissue . . . This externalisation of digestive functions by cultural evolution became one component in a suite of adjustments that permitted our species to build and run bigger brains.

料理などの技術は、実際に食品から得られるエネルギーを増やし、消化や解毒を容易にします。この効果により、自然選択は私たちの腸組織を減らすことで、大量のエネルギーを節約することができました。文化進化による消化機能の外部化は、私たちの種がより大きな脳を構築し、運営することを可能にするための調整の1つとなりました。

火を使って調理することが可能になったので、その分の組織や機能を減らしていくことが出来たのが今の人類にとって有利になった、と。これは面白いですね。確かに牛さんは4つ胃があったりします。これは重荷でしょう。もちろん草を食べていればいいという気軽さはありますが。

We outsourced water storage just as we outsourced food detoxification, leading to a different evolutionary trajectory.

「私たちは、食品の解毒と同様に、水の貯蔵もアウトソースし、異なる進化の軌跡をたどりました。」

どんどん必要な機能を外部に出していくことで身軽になるのは企業などの組織でも同じですね。

 

On the social learning subtest, most of the two and a half year old humans scored 100% on the test, whereas most of the apes scored 0%. Overall, these findings suggest that the only exceptional cognitive ability possessed by young children in comparison to two other great apes relates to social learning and not to space, quantities, or causality.

「社会的学習のサブテストでは、2歳半のほとんどの人間はテストで100%のスコアを獲得しましたが、大部分の類人猿は0%のスコアでした。全体的に、これらの結果は、2つの他の類人猿と比較して、若い子供たちが持つ唯一の特別な認知能力は社会的学習に関連しており、空間、数量、因果関係には関連していないことを示唆しています。」

人間社会のような複雑なソサエティはやはり特殊な能力が必要なのでしょうか。だからこそ人類が今の発展を迎えることが出来た、と。

 

引用が多くなってしまいました。それぐらい面白い本でしたね。

失敗の科学も最高に面白本でしたが、

gratt.hatenadiary.org

この多様性の科学も同様に、いやそれ以上に良い知見が得られました。