これもなかなか面白かった。
が、Kindle版が出ていないのはあまり人気が無いのだろうか?
原書はこちら。
この本で初めてDI(ダイレクト・インストラクション)という言葉を知りました。
「指導中の教師のアドリブを排して、完全に台本通りの指導を行う」との通り、Youtubeなどで動画を見ると、まどろっこしいのでは?というやり取りを先生と生徒が行っています。
これはこれで英語とかをこうやって学びたいものだ、とは思いますが、実際に効果があるかどうかの言及は本書に任せます。
賛否あるDIですが、「教師の準備が必要ない」と語られている点は、見過ごせないな、と思いました。
授業の準備などで時間が取られるというのは、学校や塾の先生からよく聞く言葉です。
それが排除できるというのは明らかなメリットですね。
次のようないわゆるmargin of errorの話もありました。新聞に載っている世論調査の例として、下記のような記事がある、と。
有権者1,243人を対象にした世論調査では、カルビンがホッブズに52%対48%の差をつけて上院の議席を確保した。世論調査の誤差(Margin of Error)はプラスマイナス2%である。
誤差が2%となっているから、実際はカルビンが51%のこともあるし、ホッブスが49%のこともある、つまり接戦だな!と思ってしまうが、ここでいう誤差とは調査をした結果の統計学上の誤差なので、52%に対して2σ範囲(95%信頼区間)だとプラスマイナス2%で収まるよ、つまり、50%から54%の可能性が95%(そしてもちろん50%以上票を取れば勝利なので、残り5%の内、54%以上の確率も勝つ方に含めてよい)なので、全然接戦じゃなく、圧倒的カルビン有利というのが世論調査の結果から分かる、と読み解かなくてはいけない、という話があった。まあ日本だとこういう結果に対して統計的な観点からの数値というのは載ってないと思いますが。
(それはそれとして、1243人からの調査で誤差2%とは?2400人ぐらいの調査が必要そうに思えるが・・気になるところではある)
しかし、Margin of Errorが新聞に載っているというのは良い文化ですよね。
"cnn news poll margin of error"
みたいな感じでWeb検索して出てくるCNNの記事を読むと、やはり下の方に、
Results for the full sample of 22,914 respondents have a margin of error of plus or minus 2 percentage points; it is larger for subgroups.
と書いてあったりします。
ちなみに「it is larger for subgroups.」というのは、2万人に聞いたとしても、18~29歳の層の聞き取り調査は全然できてなくて2千人ぐらいだった、というのは日本でもあるあるだと思います。その場合、2万人よりも誤差の範囲は広くなってしまいます。
まあでも、22,914人に調査したら全体では誤差範囲は0.65%ですし、2000〜3000人の調査をすれば誤差範囲は2%に収まるので十分な数値だと言えるのではないでしょうか。
日本でもこの文化は根付いて欲しいものです。
本書中に取り上げられていた、低脂肪食を食習慣に取り入れても、体重も変わらず、心臓病やがんにかかる確率も同じ、という研究結果も面白いですが、こういうのはまた時が経つと「やっぱり効果あるかも」みたいな結果が出たりするので、お好きにしてください。もちろん毎日脂肪を大量摂取しては駄目ですよ。バランス良い食生活と運動が大事だと私は思っています。
全て計算された現代において、無料のプレゼントやあなただけの割引、というのはもう嬉しいものではないだろうという推察も面白いですね。
アマゾンが突然素敵な小物を送ってきたら、今あなたがする最初の反応は、「やっべ、本を高すぎる値段で買っていたんだ 」となるはずです。
あなたは金払いの良い優良顧客と認定されています(笑)
こういった統計学やビッグデータから導き出される答えが、自分の専門分野を凌駕するとはなかなか人は考えにくいものだ、とも述べられています。そうは言っても、経験がものを言う世界だから……。そんな声が聞こえてきますよね。
こういったデータ活用をするする際には、まず自分たちの専門領域外から初めてみる、というのもいい手法なのかもしれません。アウトソースしている部分を試しに機械学習に置き換えてみる、など。社内政治的にもそのほうが楽に着手できそうです。
こういう新しいシステムに対して医者は拒否反応を持つ人が多いというのも触れられていました。比較して、パイロットというのも医師に比肩する大変難しい職業だと思いますが、
1999年に飛行機の操縦を習い始めたブリットは、パイロットが飛行支援ソフトを受け入れやすくなっていることに衝撃を受けたという。「教官に、この違いは何だと思うか」と聞いた。「簡単なことだよ、ジョセフ。パイロットと違って、医者は飛行機と一緒に墜落したりしないからね』
医者は間違えても自分が死なないですからね、という意見は穿ち過ぎなのかもしれませんが、いざという時の判断では違いが出そうです。
今までの経験を捨てて、使えるものは使う、「あれ、これいいんじゃない?」と思ったら取り入れる、虚心坦懐というのでしょうか、そんな態度が人生をサバイブするには大切です。
本書に引用されているアインシュタインの言葉を締めに置いておきます。
“really valuable thing is intuition.”
真に価値あるものとは直感である。